メビウス / 猫背 sample
LATE SHOW / もだ sample






















 遊星もジャックもクロウもみんな出かけてしまって、鬼柳はほんとうに退屈だった。
 なにもすることがないから、服をすべてリビングに置いていって、シャワーを浴びた。あつい湯は出ないが、遊星がいろいろといじってくれたおかげで、ぬるい湯ならいくらでも出る。
 共用の石鹸でからだをあらって、ついでに髪の毛にも泡をたてる。鬼柳は身だしなみを気にする方だし、もっといいシャンプーやトリートメントも、つかえるものならつかいたいけれど、ないのだから仕方ない。
 毛羽立ったタオルでてきとうに全身をふきながら、またリビングへ戻ってきた。すると、いるはずのない影がそこで床を漁っている。影はこちらに気付くと、ぎょっとして、すぐにあっちを向いてしまった。
「……クロウ、かえってたのか」
「かえってたのかじゃねええ、はやく服きろ!」
「お、お、おおっ。……見んなよお~」
「見せてんだろうがっ!」
 タオルで大事な部分を隠しつつ脱ぎ捨てた服を身につけ、そのタオルを首にかける。クロウがやっとこちらを見た。


――


 くちにためた唾液を潤滑油として垂らして、いじくってやる。視覚がきかないという状況もあってか、数回扱いただけでかたくなり、制止の声は快感を耐える声にかわってしまった。
「くうううっ……! あう、くろおおっ! いい、い、いいいぃ」
 食いしばっているだろう歯のあいだから漏れる声をきき、クロウはおのれのぞくぞくとしたものに触れた。現にさっきまで頑なにとじようとしていた鬼柳の膝は、いまとなっては完全に笑って、かっ開かれているのが、無様にうつって仕方ない。クロウは、寛げた自分のズボンのなかで、膨らむ自身を感じた。
 先走り液がだらだらと染み出し、卑猥な音をたてていた。それを塗りこむようにねちっこく扱いたり、指の先で表面を撫でるようにする。亀頭をぎゅっと握りこみ、尿道のまわりを親指でくるくるとなぞりたててみせると、鬼柳が音のない悲鳴をあげた。痙攣。収縮。すこし間をあけて、鬼柳の情けない声。クロウは口端をつり上げる。意地のわるい歯がかおをだした。
「な……なんでええ……」
 勢いよく飛び出そうとした精液を、つよい圧迫が阻んでいた。鬼柳の股関節はびくびくとふるえ、射精をしているはずだった。尻穴がきゅんきゅんと鳴いている気がする。

(P5~27...メビウス / 猫背)//
(P29~57...LATE SHOW / もだ)





















 気分はまるで絞首台へ向う死刑囚のそれだ。背後に仲間の気配を感じながら、鬼柳は断ち切るように歩き出した。
「おい、ちょっと待てよ! 話がある!」
 鬼柳は振り向かず、脚を動かし続けた。それでも呼びかける声――、クロウの声は相変わらず続いた。「おい、そこのデブ! てめーだよてめー」
 呼びかけている対象は、しかし自分ではなかった。何故ここであの男を引き止めるのか、ハッとして振り向けばポケットから札束を突き出すクロウの姿がある。てかてかと陽に焼けた赤黒い肌をした強面の男にそれを突き出し、勝ち誇ったような笑みを浮かべながらクロウは言い放つ。正義感の溢れる、自分のすることを信じて疑わない、はっきりとした口調で。
「――俺がこいつを買う、それなら文句はねーだろ。ちいとばかし少ねえが、こいつで頼むぜ」


――


 腰を推し進めるたび肉の壁がめりめりと音を立てて割り開かれている。ローションを垂らしたせいかいくらかぬめりつつも、やはり熱く、きついくらいに密着してくる。ここまできたらもうどうにでもなれ、という気持ちのほうがすっかり理性に覆いかぶさっていた。
「は、あぁ……クロウの、あっつ。これ、ぜんぶ、入ってんのか?」
「うあ、まだだな……まだ」
 鬼柳のよりも色の濃い男根をぐっぐっと押し付け、青白い尻に埋め込んでいく。ゆっくり、じれったい速度で根本まで飲み込んだときには全身にしたたかに汗を掻いていた。結合部分がにじんでくる汗でぬかるんで、少し肌を離すと鬼柳の腰がびくんと動いた。
「あ、おあぁぁ、うご、うごいて……」
 動いてほしいのかと埋め込んだペニスを抜いていくが、赤銅色のアナルが離すまいときゅうきゅうと食いついてくる。無理やり腰を使って引き抜き、既に痺れつつある欲深な男根は窮屈な腸内をもっと堪能していたいと、今度は突きに回る。
「あはぁ」、と語尾にハートマークでも乱舞してそうな甘ったるい声で鬼柳が喘いだ。

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